ばいばい、津崎。
「じゃあ、今から健ちゃんに会いにいこうよ」
そんな私の様子に気づいた美貴が、思い立ったように声を出す。「どうせ暇してるだろうし」と付け加えて、考える間もなく手を引かれながら外に出ることになってしまった。
「わ、私、まだ部屋着なんだけど……」
家を出て数メートル。髪の毛はボサボサだし、Tシャツもよれよれの適当なやつ。
「全然大丈夫だよ。ちょっと顔見たら帰ればいいんだし」
美貴が前から私の気持ちに気づいているし、そんな落ち着かない心を和らげるためにこうして会いにいこうと言ってくれたことは分かっている。
だけど昨日のやり取りが頭を過り、歩き進める足は重い。
外は茹だるような暑さで、途中で自転車に乗ってくれば良かったとみんなで口を揃えたけれど、さすがに三人乗りはできないだろうという結論が出て、「それもそうだね」と軽い返事を返す。
そもそもこんなに暑いのに美貴と剛が徒歩で遊びにきたのが間違いだったんじゃないだろうか。
いや、今はそんなことはどうでもいい。無駄なことを考えてしまうぐらい、頭が焦げそうな気温だった。
暫くして、津崎の家の前に到着した。いきなり訪ねたらやっぱり怒られるんじゃないかと剛がさっきから津崎に電話をかけているけど、繋がらないらしい。
「なんか電源切れてるっぽい」と、剛は携帯をポケットにしまう。
「充電しないで寝ちゃったんじゃない?」と、美貴が言いながら、その手は津崎宅のインターホンへ。