ばいばい、津崎。
アスファルトを蹴るたびにカランコロンと音がする。空の色が赤、オレンジ、ピンク、水色とグラデーションのように染まっていた。
お祭り会場は以前、津崎と行った電力風車がある近く。普段はなにもない平地になっている場所に出店や提灯などを並べて、お囃子の音色がもう私の耳に届いてきた。
同じ方向に向かっている小学生の子たちもアサガオの浴衣を着ていて、私より下駄で歩くのが上手だ。
不慣れな足元で小さく進み、会場の看板が見えてきたところで「皐月」と声をかけられた。
振り向くと、紺色の甚平を着た哲平が立っていた。哲平は長身だから和服がとても似合う。
「浴衣、可愛いね。一瞬、誰だかわからなかったよ」
哲平が照れたように言うから、私も少し目が泳いでしまった。そしてお祭り会場に着くと、すでに美貴と剛が待っていた。
「皐月ー!哲平!」と、ぴょんぴょんと跳ねている美貴は小さな梅が散りばめられたピンク色の浴衣を着ていた。剛も哲平同様に黒の甚平姿で、みんなすごく涼しげだ。
「あれ、津崎は……?」
辺りを見渡しても、どこにもいない。
「なんか遅れてくるって。もう向かってるって言ってたけど、先に出店とか行ってていいってさ」
剛はそう言って、とりあえずみんなで歩き出す。
……遅れるって、本当に来るよね?
てっきり、すぐ会えると思っていた私はかなり落ち込んでいた。ずっと顔を見ていないし、せめて元気かどうかだけでも確かめたい。
色々な出店が並ぶ道には人がたくさんいて、どうやら島以外の人たちも訪れているようだ。