ばいばい、津崎。


『美貴から連絡はあったけど、やっぱり外に出るのは危ないしやめようってことになったんだ。だから健にも連絡してないよ』

ドクン、とイヤな予感が脳裏によぎる。


『皐月こそ今どこにいんの?もしかして外?』

剛の声がぼんやりとしか聞こえてこない。


待って。頭が整理できない。

津崎と私は会う約束をしていて、家を訪ねたら津崎はすでに出掛けてきた。てっきり剛の家に行ったと思ったのに、津崎はそこにもいない。


……友達の家に行ったって、どこ?

津崎に私以外の友達はいないし、こんな嵐の中、会いにいく人なんて思い当たらない。


『……もしもし皐月……?』

電話の向こう側で、剛が私に呼び掛けていたけれど私は「ごめん。またかける」と、電話を切った。


8月21日。台風、叩きつける雨。海鳴りの音。
すべてがあの過去へと繋がっていく。


まさか……。

私は足元に溜まっていく雨水を蹴って走り出した。

「ハアハア……」と、呼吸が上がっていく中で、携帯の発信ボタンを押す。かけた番号はもちろん津崎。


プルルル……と、コール音が耳に響き、1回2回3回と過ぎても津崎は電話に出ない。


お願い、出て。出て……っ。

6回目のコール音で、やっと電話は繋がった。



「津崎っ……!今どこにいるの……!?」

一旦、呼吸を整えるために足をとめた。

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