ばいばい、津崎。
きみの特別になれたら、どんなに幸せだろうと考えた。
ずっと隣で苦しい時も嬉しい時も共に過ごし、26歳の私たちがどんな繋がりかは分からないけれど、できれば10年後も20年後も、ずっとずっと先の未来でも一緒にいたいと思ってた。
私は津崎が好きだ。
好きで、好きで、仕方がないと、本当はきみに伝えたかった。
なによりも誰よりも大切だと、隣にいてほしいと、津崎を失ってから気づくのはもうイヤだ。
だから、私は伝えるの。
この気持ちを全部、全部――。
「ハア……ハア……」
打ち付ける雨風の中、津崎は防波堤に立っていた。
名前を呼ぼうとした時、その様子に違和感があった。なにやら胸の当たりを苦しそうに押さえていて、体がそのまま前のめりに倒れていく。
「津崎っ……!!」
私は防波堤のコンクリートを蹴り、津崎へと手を伸ばす。
――『男の子が海に飛び込んだ』
島の住人が目撃したのは、この光景だ。ふらりと体の力が抜けて、そのまま吸い込まれるように落ちた。
明かされなかった真実。
私が知りたかった、答え。
きみは、命を絶ったのではない。
きみは、胸の痛みで海へと落ちんだね。
私はきみを、この荒波に奪わせない。私が未来を変える。津崎と私の明るく、かけがえのない未来に変えるのだ。
チャポン……と、津崎の携帯が海に沈む。
「ハア……ハア……ッ」と、肩で呼吸しながら、私はしっかりと津崎の手を掴んでいた。
そしてギリギリのところで、踏み止まった津崎はその場にしゃがみこむ。