ばいばい、津崎。
「ハアッ……。津崎、大丈夫?」
雨で冷たくなっている手をぎゅっとする。
「……ハア……うん。急に心臓が苦しくなって……」
まだ顔を歪めている津崎を落ち着かせるように、私は背中を何度も擦った。
「良かった。津崎が海に奪われなくて……っ」
こうして触れられること。目の前にいて見つめ合えるこたと。あの悲劇を止めることができて、本当によかった。
私は安心感で胸を撫で下ろしながら、津崎の手をさらに強く握る。
「津崎。今度は私の話を聞いて」
過去に叶えられなかったこと。
ずっと溢れ続けていた、きみへの想い。
「私、津崎が好きだよ」
なにものにも代えがたい、唯一無二の大切な人。
「たとえ長く隣にいられなくても、この気持ちだけはなくしたくない。最後の最後まで、津崎と一緒にいたい」
止まったままだった時間がカチと動きだす。未来に向かって、少しずつ、ゆっくりと。
「……俺、死ぬよ」
「うん」
「お前を置いて。悲しみだけを残して俺はいなくなるんだぞ」
それでもいいのか、という迷いと不安が混ざったような瞳で、津崎は私の目を見つめた。