ばいばい、津崎。


もしかしていないのだろうか。

そもそも津崎が自宅謹慎を素直に受け入れるわけがないし、規則なんて無視して出掛けてしまったのかも。

私がそんなことを考えている間に美喜は「うーん」と、悩んだような声を出して、今度は玄関のドアを叩きはじめた。


「津崎健太くんいますかー?」

ドンドン!と、まるで借金の取り立てのように美喜は呼びかけている。


「ちょ、ちょっと美喜……!?」

私は自転車を停めて、慌てて駆け寄った。


そういえば美喜は思い立ったらすぐに行動する猪突猛進だってことを忘れかけていた。

学生の時は度々こうして驚かされたっけ。


「だって居留守使ってる場合もあるでしょ?」

美喜はそのあとも呼びかけを続けていて、島というゆるい土地柄だから許されるけれど、別の場所で同じことをしたら速攻で警察を呼ばれてしまうレベル。


さすがにこれ以上は、と美喜を止めようとした時、玄関のドアが開いた。

それは中の様子が分からないほどのわずかな隙間。



「……んだよ」

ぼそりと、不機嫌そうな声が聞こえてきて、胸が一瞬で熱くなる。

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