ばいばい、津崎。
「つ、津崎って不良だよね!なんでケンカなんてしたの?」
そんな心境に気づかれないために、しどろもどろになりながら唐突にまた質問した。
「売ってきたのは向こうだよ」
「勝ったの?」
「誰に聞いてんだよ」
島で津崎のことをよく言う人はいなかった。荒くれもので問題児。まるでなにかと戦うように敵をつくって、周りの人たちとの関わりを遮断する。
そのせいで盗難があったとか、物が壊されたとか、島で起こる悪いことはすべて津崎のせいにされた。
『あそこは片親だから教育が行き届いてないんだ』と、不合理なことを言われて、同じ環境の私はそのたびに嫌悪感を抱いていた。
偏見なんて、みっともない。
だけど私も孤立していたことに違いはないし、島で暮らす人たちに対して先入観を持っていたから、そうやって狭い見方になってしまうことは仕方がないと、諦めていたりもする。
「ねえ、連絡先交換してよ」
私はポケットから携帯を取り出した。