ばいばい、津崎。
私たちが過去にどんなタイミングで交換したのか忘れてしまったけれど、少なくとも私からこんなに積極的に話すことも聞くこともなかったから、実際にはもう少し後の出来事だったかもしれない。
「なんで?」
いきなり尋ねた私に津崎が不審そうな目で見た。
「暇でしょ?メールぐらいしてあげるよ」
「なんで上から目線なんだよ」
たしかに今のは可愛いげがなかったと思う。
「じゃあ、友達になろう!私、友達が少ないからなってよ」
津崎はやっぱりすぐに返事をしてくれなかったけれど、私がしつこく「お願い!」と言い続けると面倒くさそうな顔をして渋々連絡先を教えてくれた。
携帯に登録された【津崎健太】の名前。
きみを繋ぎ止めるためには10年前よりもっと近い距離にいなければならない。
この海に奪われないように。
悲しい別れなんて、こないように。
津崎のことを、今まで以上に知るために。