ばいばい、津崎。


……やってしまった。

夏のセールが来週から始まろうとしている忙しい時に無断で遅刻だなんて怒られるどころじゃ済まない。人手不足だからクビにはならなくても、確実に迷惑をかけてしまった。


焦る気持ちを抑えながら、私は点滴を終えて1階の受付へと向かった。保険適用内の点滴は針代も合わせて千円だった。


病院を出た私はすぐに仕事場へと連絡をいれる。電話に出たのは店長の前田さんだった。

遅刻することになった経由を話すと、怒られるどころかすごく心配してくれて『最近、元気がないように見えたから今日はこのまま休んでいいよ。有給扱いにしておくから』と、仕事が休みになってしまった。


気遣いは嬉しいけど、どうせ家に帰ってもやることはないし、暇になると色々なことを考えてしまうから、忙しいぐらいが丁度いいのに。


急に時間をもて余してしまった私はカバンからスマホを取り出して、倒れる前に届いていた美貴のメッセージを見つめる。


返信するよりも電話のほうが早いと思って、私は美貴へと繋がる番号の発信ボタンを押した。

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