ばいばい、津崎。


そのあと学校に着いて2年B組のドアを開けた。

教室はワックスがかけられている木目調の床や開けっ放しの窓から入ってくるグラウンドの砂ぼこりの匂いがする。

過去へとトリップして今日で二日目だけど、やっぱりまだ学校という雰囲気に溶け込めない。

席に着くと、すぐに美喜が声をかけてくれた。


「皐月おはよー」

美喜の髪型はおだんごで、手には電池で動くピンク色の小型扇風機。プラスチックのプロペラがくるくると回っていて、美喜は顔の近くに当てていた。

「うん、おはよう。それ効く?」と、私は扇風機を指差す。


「微妙。生暖かい風が気休めにくるだけ」


未来ではエアコン設備がしてある学校がいくつもあるけど、この時代じゃ考えられなかった。

10年後のこの教室はどうなっているだろう。島の情報なんてなにひとつ頭に入れてこなかったから、私は未来の島がどんな風に変わっているのか知らない。


「でも髪型は涼しそうだよ」

私は思考を戻すように、美喜のおだんごを見た。


美喜は包丁も使えないほどの料理下手だったけど、こういうところは器用で、いつも長い髪の毛を可愛くアレンジしていた。

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