ばいばい、津崎。


一年ぶりにお邪魔した美貴の家には写真がたくさん飾ってあって、羽菜のオモチャもずいぶん増えた。


「お昼ごはんなにか食べる?パスタでも作ろうか?」

「え、美貴が作るの?」

お昼どきに遊びにきて、なにも食べ物を買ってこなかった私の気遣いのなさよりも、美貴が料理を作ってくれようとしていることにビックリしている。

私も人のことは言えないけれど、家庭科の調理実習の時には必ず包丁で指を切ってたし、クッキーだって原形が分からないぐらい丸焦げにしてしまったあの美貴が……?

すると、美貴はキッチンに立って腰巻きエプロンを締めた。


「もう、これでも主婦ですからね。料理が苦手なんて言ってる暇もなくいつの間にか克服しちゃったよ」

美貴はそう言って大きなお鍋にお湯を沸かしはじめた。


高校時代、一番落ち着きがなくてつねに彼氏がいなきゃダメだった美貴も結婚してずいぶんと変わった。

旦那さんは包容力がある一回り上の人。『私のワガママを許してくれるんだよね』と付き合っていた当時はよくのろけていた。

まさか結婚までするとは思ってなかったけれど、子育ても家事もちゃんとして充実した毎日を送ってるんだなって、美貴の幸せそうな顔を見れば分かる。

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