ばいばい、津崎。
坂道を勢いよく下ると、とても涼しい風が吹いた。
私の髪の毛は揺れるのに、短髪で毛質が硬い津崎の髪の毛はあまり揺れない。
気づかれないようにおでこをそっと背中につけた。
津崎はプルメリアよりもいい匂いがして、私の瞳から流れた涙が風でダイヤモンドのようになびいた。
ねえ、津崎。
私は新しいことをはじめることに臆病になってしまった。
満員電車は嫌いだし、仕事だって私がいなくても成り立つ。そんな淡々とした毎日を私は未来で生きてる。
そこにきみはいないけど、もしいたら……。
これから見つければ、と26歳の私にも言ってくれる?
そしたら私、なんでもやれそうな気がする。
だから一緒に大人になろうよ。
なってよ、津崎。