朝はココアを、夜にはミルクティーを
古びた休憩室で、サンタとトナカイが無言で休憩をとる。
とてもシュールな絵面だ。
「─────あと五分で戻らなきゃ」
時計を見て私がそう言うと、社員さんは全力で拒否するようにブンブンと首を振った。
「俺はもう無理だ!身体が動かない!五十すぎにはつらいよ〜」
「そんなぁ。トナカイ一人じゃ子どもたちも納得しませんよ!」
「……瑠璃ちゃん、もう俺たち逃げないか?」
悪魔のような囁きにうなずきそうになっていたら、休憩室のドアが開いて亘理さんが顔を出した。
「お疲れ様です。二人とも、大丈夫ですか?」
「大丈夫じゃないです!」
声を揃えて返すと、彼は苦笑していた。
「……そのようですね」
トナカイの頭が置かれたテーブルに、そっとサンタの帽子が置かれる。
真っ赤な衣装も暑そうだけど、私の着ぐるみだって死ぬほど暑い。でも、私よりも倍も歳を召している人に文句は言えない。
なんだかんだで三日間、笑顔でちゃんとサンタクロースを演じていたのだからすごい。
「瑠璃ちゃん、ごめんな。ちょっとトイレ行ってくる。そしたらまた頑張ろう」
「はい。無理しないでくださいね」
いつもは水色のエプロンが似合う笑顔の優しいおじさんという感じの社員さんが、今日はくたびれた笑顔を浮かべる。
そしてヨイショと立ち上がろうとしたら、突然なにかに襲われたみたいに目を見開いた。
「あ!!」