朝はココアを、夜にはミルクティーを
そこには突っ込まないでほしいというオーラを出したつもりだけど、どうやら亘理さんは私のそのオーラを感じ取った上でわざと聞いているようだ。
彼の目の奥に、なにかの意思を持っているのが見て取れる。
「話したくないことですか?」
「………………はい」
「俺でも?」
「……亘理さんだから、話したくないんです」
こんな言い方をしたかったわけではない。
他に言葉が思いつかなかったというだけ。
─────恋愛絡みのあんなみっともない話を彼にするのは、抵抗があったのだ。
「……そうですか。分かりました」
亘理さんは、それ以上は聞いてこなかった。
その代わり、空気を変えるように立ち上がると冷蔵庫へおもむき、先ほどのクリスマスケーキを持ってきた。
「食事もほとんど終わりましたし、ケーキでも食べましょう」
「フォークとお皿、持ってきますね。あっ、ミルクティー作ります」
「ケーキとミルクティー、合いそうですね。あ、それとフォークだけで大丈夫です。お皿はいりません。ずっとやってみたかった食べ方、してみてもいいですか?」
どういう食べ方ですか?
という私の視線を受け取りながら、亘理さんは箱を開けてケーキをテーブルに出した。
綺麗でツヤツヤの生クリームがホール全体に塗られていて、真っ赤なイチゴが散りばめられている。
チョコで作られた家と、砂糖菓子で作られたサンタクロースとトナカイ。ここでもトナカイはちょっととぼけた顔をしていた。
そのケーキに、亘理さんは狙いを定めるようにフォークの先を向けてニヤリと笑った。
「小さい頃から憧れてたんです。ホールケーキをそのまま食べるってやつ。やったことありますか?」
「ないです!私も初めて!」
即座に食いついた私に、彼は嬉しそうな顔をした。