朝はココアを、夜にはミルクティーを
「もしかして、白石さんと以前一緒に働いてらっしゃった方ですか?」
亘理さんは、私の履歴書を読んでいる。
だから、前に勤めていた会社の名前もしっかり把握しているのだ。名刺を見て即座にピンと来たのだろう。
一方の涼は、あっけらかんとその問いかけにうなずいた。
「そうですそうです!同じ職場でした!」
怪しい雰囲気を感じ取り、私は慌てて彼らの会話に割り入る。
「同じ職場って言っても関わりもそんなになくて、それに……」
「えー!なんだよ瑠璃!一応、俺と付き合ってたじゃん。一応だけどさ」
─────もう、亘理さんの顔、見れない。
私が黙りこくったのをいいことに、涼はベラベラと楽しげに思い出話というには私にはつらいことを亘理さんに話していた。
「まあ色々あるじゃないですか、男と女って。俺も色々あったんですよ。同じ男だから分かるでしょ、店長さん。で、同期のやつと結婚したらいきなり瑠璃が辞めちゃって。あれびっくりしたよー。なんで急に辞めたの?もしかして俺が結婚したのショックだったとか?」
話を振られても、私は返事もできなかった。
ひと通り話をしたあと、涼はお弁当を受注してもらえたことが嬉しかったのか亘理さんに何度もお礼を言い、頭を下げ、軽い足取りでお店を出て行った。
私と亘理さんは彼を見送りに外に出て、彼の車が見えなくなってからようやく二人になれた。