朝はココアを、夜にはミルクティーを
13 優しい光の中で
食事、と一言で言っても、様々である。
敷居の高そうなレストラン、ししおどしが定期的に鳴り響く料亭、ちょっと非日常的なバリ風のカフェ、大衆向けの定食屋、常連さん向けの小さな小料理屋、ファミレス、エトセトラ。
一緒に住んでいた頃、たまに外食はしたことはあったけれど、いつもラーメンやファミレスや定食屋などといった、カジュアルでリーズナブルなお店が多かった。
私はそれでよかった。それが、よかった。
「ここのチキン南蛮定食って、どうしてこんなに美味しいんでしょうね」
たっぷりかかったタレをチキンに絡ませながら、嬉々として口に運ぶ。
そんな様子を、テーブルを挟んで向こうに座る亘理さんが頬杖をついて見ていた。ちょっと面白いものでも見るような目で。
「ここに来ると、白石さんはいつもそれを頼みますね」
「これは性格ですね、冒険できない。亘理さんは逆に、いつもメニュー変えてませんか?」
「俺はいつも『本日の定食』です」
彼の手元には、揚げたてのチーズささみフライやエビフライ、牡蠣フライなど、フライの盛り合わせが広がっている。
そっちもなかなか美味しそう、とちらっと見てしまった。
コマチからほど近いこの定食屋には、何度か足を運んでいた。
彼と同居する前から、私も一人で来たりしていたお店だ。
一人で来れば当たり前のようにカウンター席に通されるので、いつもそちらに座り慣れていた私にとってこのテーブル席は亘理さんと来なければ通されない。
この三年で、すっかりおひとり様には慣れていた。
「外、けっこう積もってきましたね」
私たちの座る席は窓際に面していて、外がよく見える。
亘理さんの言葉に釣られて外を見ると、さっきよりもさらに吹雪いていた。
夕方くらいまではチラチラと降る程度だった雪が本格的に降り出したのは、私たちがコマチを出たくらいだと思う。
それまではこんなに降っていなかったし、道路もうっすら白くなっているくらいだったのに。
天気予報をちゃんと見ていなかったけれど、これは予報通りなのだろうか?