朝はココアを、夜にはミルクティーを
彼はビニール袋に入った使い捨てのカイロを私に渡してくれた。
その気遣いの心は、毎度毎度頭が下がる。
袋を胸に抱くようにかかえて「ありがとうございます」と噛みしめるみたいにお礼を言った。
外に身を置いたまま微笑んだ亘理さんがそこから一歩下がったのが見えて、胸の奥にしまっていた気持ちが少しだけ顔を出した。
「明日には復旧するといいんですが、もしかしたらお店も影響を受けてるかもしれません。ちょっと行ってこようと思って─────」
彼の言葉が止まる。
それは私のせいだ。
私が、彼の服をつかんで引き寄せたから。
「亘理さん、あの……」
言いかけて、やっぱりやめようか迷って、でも離したくなくて目を伏せる。
「一緒にいてもらえませんか。私も明日、朝早く一緒に出勤しますから」
明日の朝にお店を見に行ったんじゃ、間に合わないのかな。
それならこの申し出は迷惑かな。
引き止めたくせにすぐにやめておけばよかったと思ったけれど、亘理さんはあっさりとうなずいた。
「一緒にいます」
積極的な女の子なら、ここできっと好きな人の胸に飛び込んでもいいだろう。
それができないのだから、自分の度胸のなさに少しばかり悲しくなった。