朝はココアを、夜にはミルクティーを
数ヶ月前に誕生日プレゼントでもらったアロマキャンドルに、火をともす。
それをテーブルに置くと、ぼんやりとした明かりが部屋を包んだ。
どうしてなのか、一人で過ごすのと二人で過ごすのとでは安心感が違う。
その相手が亘理さんとなれば、効果はさらに絶大なものになる。
「冬で良かったです。お店の冷蔵庫や冷凍庫も、無闇に開けなければたぶん大丈夫だと思います。問題は店頭に並べている食品ですね」
「破棄になりますか?」
「おそらくそうなりますね。でも天候による停電ですから、仕方ありません」
結局、こんな時でも仕事の話なのだから私たちはどうしようもない。
つなぎ止めるものが仕事、というのは少しばかり寂しい気もするが、今の私は隣に亘理さんがいるというだけで心が満たされていた。
久しぶりに家に亘理さんがいる。
それは、こんな時に不謹慎だけど奇跡みたいだと思った。
おめでたい私とは違って、亘理さんは明日のことで頭を悩ませているようだ。
「明日納入になる商品なんかも道路の影響で業者さんが時間通りには来られないでしょうし、商品の並びは大幅に変更しないとだめかもしれません」
「スタッフの通勤の遅れも頭に入れておかないといけませんよね」
「あぁ、そうですね。それ大きいです。学校関係が休校になったら、急きょ休む人も出てきますからね」
「ニュースを見ようにも、テレビがつかない……。携帯はまだ電池に余裕があるので、情報収集は携帯でしましょうか」
「そうですね」
携帯の電池の残りを確認してポケットにしまったあと、彼が買ってきてくれたホッカイロで冷たい指先を暖める。
非常事態の時のために何も準備をしていなかったので、こういう時にどんな行動をすべきか考えておくことの重要性を実感した。
一方の亘理さんは、私がさっき作ったミルクティーを飲んで温まっている。