朝はココアを、夜にはミルクティーを
14 詰め込んだ気持ち
朝、目が覚めたら、亘理さんはもういなかった。
昨日は泣くだけ泣いてスッキリして、彼とはこれといった会話も交わさずにソファーに座り続け、お互いに肩を寄せあって過ごした。
そうしているうちに、ウトウトしてきて寝てしまったのだ。
彼はあのあと少しは眠れただろうか。
きっとお店が停電の影響を受けていないか気になって、早々に出向いたに違いない。
私も一緒に出勤するって言ったけれど、寝ているから起こさずに出て行ったのだ、きっと。
ベランダからのぞく外は、真っ白の銀世界。
いつまで降り続いたか分からない雪は今朝はもう止んでおり、太陽の光に反射してキラキラと輝いている。
元々は中番で出勤のシフトだったけれど、早番よりも早い時間に出勤することにした。
朝ごはんは食べずに、冷蔵庫の牛乳だけを胃に流し込む。
そこで、気がついた。
電気が復旧している。
冷蔵庫も稼働しているし、エアコンもつくし、お湯も出る。
よかった、大したことがなくて。
ホッとしつつ、昨日の服から違う服へ着替えてすぐに外へ出た。
出勤すると、すでに男性の社員さんが何人か駐車場を雪かきしていた。シフトなどは関係なく、みんな早めに来たらしい。雪かきをする人たちの中に、亘理さんの姿もあった。
彼の姿を見た瞬間に心臓が騒ぎ出したけど、なるべく顔には出さないように声をかける。
「おはようございます」
「おはようございます。まだ休んでいても大丈夫だったのに、疲れてませんか?」
やっぱり、亘理さんはいつもの感じ。
昨日、チラリと敬語が消えた気がしたけれど、また復活している。
「大丈夫です。雪かき、私も手伝います」
「あ、こちらは人手は足りてます。開店準備の方をお願いしてもよろしいですか?」
「それはいいですが……停電の影響は?」