朝はココアを、夜にはミルクティーを
「返すとか返さないとか、人の気持ちはモノじゃないんです!そんな気の迷いなんていう綺麗な言葉で片づけないでください。迷うくらい、あなたの想いはその程度だったってことです!そんなのどうして自分で分からないんですか?」
「……説教ですか?」
頬杖をついてつまらなそうな顔をした彼女は、もう笑ってはいない。
「復縁を望むのは自由ですから、どうぞ思うようにやってください!私に許可なんか取らないで、本人に直接言ってください」
「会ってくれないんですもの」
「それが答えだと思います。でも、これだけは言えます」
私はほとんど飲んでいないカフェモカを手に取り、もう一方の手にはバッグを掴んで立ち上がった。
「私はあなたよりも、もっと亘理さんのことを大切にできます。それだけは、自信があります」
「─────怒らせてごめんなさい。そんなに熱くならないで」
「熱くもなりますよ!」
好きな人のことだから、仕方ない。
自分の中にそんな要素があるなんて知らなかった。ここまで腹立たしく思えて、そしてこんなに悲しくなるなんて。
郁さんは観念したように息をつくと、今すぐにでも立ち去りたい私の手をそっと包んだ。
「本当に、ごめんなさい。靖人からは、もうこれからは二度と連絡も取らないとこの間言われたの。だから……ちょっとムカついて、からかってしまいました。……ごめんなさい」
もうすでに、亘理さんからは縁を切られてたのか……。
それを聞いて、気が抜けて冷静になれた。
そっと彼女の手を取って、引き剥がす。
こんなところに、長居する必要はもうない。
「さよなら」
それだけ言い残して、私はカフェを出た。
外の冷たい空気を吸い込んだら、なんだか涙が出た。
溢れるほどじゃないけど、ほろほろとこぼれて落ちる。
胸を張って、彼に好きと伝えてもいいかな。
そんなことを考えながら。