朝はココアを、夜にはミルクティーを


「…………今日は、突然すみませんでした」

彼が切り出してきたのは、告白のことだとすぐに分かったので首を振る。
たしかに突然だったので驚きはしたが、あのタイミングで伝えてくるところが亘理さんらしいと思った。

彼は続けざまに

「それから、その、お見苦しいところも見せてしまって。そちらの方もすみませんでした」

と、気まずそうに目を伏せた。
涼とのやり取りは、私にとってはかなり衝撃的だった。たぶん、一生忘れられない。

「…………嬉しかったです」

「本気で言ってます?」

「本気です。初めて怒ったところを見たので驚きましたけど」

「前にも言いましたよ。腹が立てば普通に怒る、と」

……そんなこと言ってたかな。記憶を辿ろうとしているところに、亘理さんの言葉が入り込んできた。

「好きな人があんな風に言い寄られていたら、腹も立ちます」


なんと返せばいいか迷っていると、彼はなぜか反省したように肩を落とし、そしてとても悔しそうにつぶやいた。

「本当はきちんと食事にお誘いして、その場で気持ちを伝えるつもりでした。あの停電した雪の日も、好きだと伝えるつもりで誘ったんですが……」

「え?そうだったんですか?」

「はい。でも、あの日は白石さんの元彼が来店して、あなたが落ち込んでいるのが分かったのでやめました。だから日を改めてと思っていたんです」

吹雪の駐車場で「また近いうちに食事に行こう」と誘ってくれたのはそういう意図があったのか。
あの時はよく分からなかった彼の気持ちが分かり、なんとなく微笑ましくなった。


「白石さんの家に住ませていただいてる間は、ちゃんと距離を置いて節度を持って接していました。そうじゃないとなし崩し的に強引に気持ちを動かそうとしているみたいで、不誠実でしょう?」

「─────真面目すぎて、尊敬します」

亘理さんの性格の十分の一でもいいから、涼に分け与えてあげてほしい。それくらい、彼はまっすぐな人なのだと痛感する。

誠実という言葉は彼にぴったりだ。

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