朝はココアを、夜にはミルクティーを
けっこう長い間そうしていたものの、時間も時間なので溶けそうな脳みそを奮い立たせてやっと顔を上げた。
「あの、亘理さん……」
「はい、なんでしょうか」
少しだけ顔を離し、亘理さんが不思議そうに首をかしげる。
「もう時間も遅いですし、明日は私たち早番です」
「……そうですね」
「できればずっとこうしていたいんですけど、さすがにもう帰らなきゃ」
しかも、ここってコマチの駐車場だし。
従業員はみんな帰ったとはいえ、職場でこんなことをするのは気が引ける。
すると、亘理さんは少しばかり呆れたように苦笑した。
「現実に引き戻しますね、白石さんは」
「えぇ〜、そんな言い方しなくなったって。しらけました?」
「いや、このままだと俺もまずいなと思ってはいました。気持ちが通じると、今度はどうしても触りたくなるので」
「そ、そ、それは……」
さっきからひたすら忙しなく騒いでいる心臓が、もっとうるさくなりそうで鎖骨の下あたりをぎゅっとつかむ。
「分かる気は……します。でも明日は早番なんです」
同調しながらも、仕事のように思ったことを言ってくれるのはいいけどこっちのペースも考えてほしいと、本気で苦しくなってきた。
一度視線を外した亘理さんがなんらかの思考を巡らせたのは見て取れた。
彼の横顔を見つめていると、その数秒後にはもう目が合っていた。