朝はココアを、夜にはミルクティーを
エピローグ
早番の日の朝は、早い。
真冬の朝となるとアラームが鳴る頃にはまだ外は暗いから起きるのもつらくて、何度も二度寝しようという誘惑がやってくるのだ。
携帯のアラームで目を覚まし、寝ぼけ眼のまま隣に寝ている亘理さんを揺すって起こす。
「亘理さん、起きてください」
「………………おはよう、ございます」
反応は遅かったが、彼も目を覚ました。
布団から手を出してベッドサイドのリモコンを見つけると、エアコンの電源をつける。寒いので部屋が暖まるまで布団の中で待機だ。
「さすがに眠い……」
枕に顔を埋めて、弱音にも似た言葉を彼がつぶやくのが聞こえたので思わず吹き出す。
「今日はお弁当、なしでもいいですか?寒いからもう少し布団にいたいので」
本当はもっと亘理さんにくっついていたいという言葉はなんとか気合いで飲み込む。
「……もちろんです。白石さんのあの絶品のだし巻き玉子を食べられないのは残念ですけど」
私の申し出を受け入れながら、亘理さんは優しく抱き寄せてきた。シングルの狭いベッドに二人で寝るのはかなりきついけれど、なぜか今は幸せな気持ちしかない。
しかし、私には彼に言いたいことがある。
「いつになったら、敬語をやめてくれるんですか?お付き合いしても、ずーっと敬語なんですか?」
「あぁ……、まあ、やめてもいいんですけど」
大して気にも留めていなかったような口調で、亘理さんは目を細めて軽く笑う。
こちらとしてはけっこう重要なことなのだが、彼にとってはそうではないようだ。