朝はココアを、夜にはミルクティーを
その夜帰宅した私は、渡されたファイル二冊をリビングに広げて、途方もない量のデータを流し見していた。
「何がマーケティング力だぁぁぁ!」
こんなの入力するだけでも余裕で一週間かかるじゃないか、と床に叩きつけたくなったけど、できないのが私。
半日ですべて割り出せるなんてヤツは言っていたけど、無理に決まってるから!
なんなんだ、あの人は。
何も考えてなさそうに見えて、そこそこ考えてるってこと?
人に意見を求める前に、自分が意見を言いなさいよ!
はあぁと盛大なため息をついて、ソファーに身を投げ出す。
眼精疲労、肩こり、頭痛、エトセトラ。すべて今日いきなりやってきた私への災難のせい。
……亘理靖人のせい!
早番だったから夕方には上がったけれど、時計を見たらいつの間にか針が二十一時を指していた。
どうりでお腹がすいたわけだ。
のろのろと立ち上がって、冷蔵庫を開ける。
中にある食材はわりと調理すれば使えそうなものが揃っていた。
でも─────
「……面倒くさい」
料理をする気力が起きず、なにかコンビニで適当に買ってこようとバッグを開く。
歩いて五分ほどの距離にコンビニがあるのは一人暮らしにはありがたい。
しかし、いつまで経っても目当てのお財布が出てこない。
あれ?あれ?とやや焦りの気持ちが出てきた頃、ふと思い出した。
そういえば、今日のお昼休憩の時に自販機でお茶を買ったんだった。
その時にお財布をロッカーの中のバッグに入れたつもりだったけど、ロッカーのどこかに落ちてしまったのかも。
じゃあ、いいや。
と明日また仕事の時に見てみようと思ったものの、あのお財布には保険証とかキャッシュカードとかクレジットカードも入っているし、万が一ロッカーじゃない場所に落ちていたりしたら怖い。
結局、気になってどうにもならなくて、コートを着て真っ暗な外へ飛び出した私は車へ乗り込み、職場であるお店へと向かった。