朝はココアを、夜にはミルクティーを
その場で相談しながらルールを決め、パソコンでパパッと作った簡単なものをプリントアウトし、リビングの壁掛け時計の隣に貼りつけた。
満足げに息をついた私に、後ろから亘理さんが肩身の狭いような顔で「なんかすみません」と謝ってきた。
「成り行きとはいえ、拾っていただいて……」
「いえ、いま店長に倒れられても困るのはこちらですので。……あ、必要以上に近づかないでくださいね。亘理さんのこと、まだよく知りませんし」
「はい、大丈夫です。そこまで性欲旺盛じゃありません」
私の警戒心は、どうやら空振りに終わりそうだ。
たしかに彼からは私をどうにかしようとか、そういう感情が一切感じられない。
それを無意識に見出したから、ついうちに来てくださいなんて言ってしまったのかもしれない。
我ながら思い切ったことをしたなぁとは思ったが。
でも、こうでもしないと彼はあのままあそこに住み続けて、いつか必ず体調を崩してしまうのというのは目に見えていた。
亘理さんの荷物は、本当に極少だった。
貴重品以外に、職場で着るためのカジュアルな服が何着かと、スニーカーと革靴の二足だけ。あとは、歯ブラシとメガネくらい。
ちょうど断捨離したばかりで衣装ケースがひとつ丸々余っていたので、それに彼の服をしまうことにした。靴もシューズボックスに余裕があるので、そちらへ収納する。
好きな人と同棲を始めるようなドキドキ感はもちろん皆無だ。
「あと、これは私のパソコンなんですけど、もしも持ち帰った仕事なんかあったりした時は使っていいですよ」
「うわぁ、助かります」
さっきまで使っていたパソコンは、まだ電源を切っていないので画面がついている。