朝はココアを、夜にはミルクティーを
これだけ仕事熱心なのに、プライベートが残念だというところが彼の欠点かもしれない。
「すみませんが、そろそろお風呂をいただいてもいいでしょうか?」
時間も時間なので、亘理さんがそんなことを申し出てきた。
いつのまにか時計は日をまたぎそうになっている。
私は明日は遅番だから余裕があるが、あちらは早番だ。もちろん先にどうぞ、と譲った。
使っていなかった新品のバスタオルを出して、お風呂のシャワーの使い方などを簡単に説明する。
狭いけれど浴室に繋がる洗面所があるので、そこで服を脱ぎ着してもらうことにした。
「この青いカゴに、亘理さんの洗濯物を入れるってことでどうですか?私のは、こっちの白いカゴに入れますから……」
洗濯機の上に設置した簡易的な棚にカゴを置いたのだが、ハッと大事なことを忘れていたと彼の顔を見やる。
亘理さんの視線は白いカゴの中身に集中している。
「ちょっ……!ヘンタイ!」
「え?何がですか?」
急いで白いカゴを引っ張り出して背中に隠すと、彼は怪訝そうな顔をした。
いつも一人だから洗濯は二、三日に一度回す程度。この白いカゴには昨日つけた下着も入っていることを忘れていたのだ。
ヤツに見えてしまったかもしれない、私の水色のブラとショーツが!
「仕方ないですよ、同居するってこういうことです」
絶対に下着を見たな、こいつ。
呆れたような物言いをされたので、私はムキになって反論する。
「亘理さんがそんなこと言える立場にあります!?一応こっちは嫁入り前なんですから、気を遣ってくださいよ!」
「嫁入りのアテはあるんですか?」
「今のところはありませんけど」
「まあ、事故らないように気をつけます」
「は?事故?縁起でもない!」
「だから気をつけるって言ってるじゃないですか」
狭い洗面所で言い合っていたら、ちゃんと奥に押し込めなかった青いカゴが落下してきた。
ぶつかる気がして目をつぶったら、その前にしっかりと亘理さんがカゴを手で止めてくれていた。
「大丈夫ですよ、落ちてきませんから」
そう言われて目を開くと、思ったよりも近くに彼の顔があって飛び退いた。
相手がイケメンじゃなくても、こんな風に仕事を離れて距離が詰まると案外ドキドキしてしまうものなんだなと密かに感じてしまった。
……いや、恋愛のそういうドキドキとは違うやつだけど。