朝はココアを、夜にはミルクティーを
お風呂を済ませて、寝る支度も終わったあとは寝室とリビングを仕切る引き戸をピッタリとしめる。
テーブルを動かす音が聞こえる。
友達なんかが泊まりに来た時のために買っている簡易的な布団を亘理さんは使っていて、リビングに敷いて寝てもらっているのだ。
さすがに同じ寝室で寝るようなことは、断じてしない。
ベッドに潜り込み「おやすみなさい」と声をかけると、柔らかい声で「はい、おやすみなさい」と返事がした。
寝室の電気を消すと、リビングの電気も消える。
私たちは、扉一枚隔てて眠りについた。
─────ところが、眠りについてから数時間後。
なんとなく喉が乾いて目が覚めた私は、キッチンで水でも飲もうとベッドを抜け出した。
そこで気がついた。
リビングから微かに明かりが漏れている。
そっと引き戸を開けると、パソコンの画面が煌々とついているのが確認できた。その手前に人影もあるけれど、まったく動かない。
「亘理さん?」
引き戸を開けて声をかけたけど、彼はテーブルに突っ伏していて返事もしない。
つけっぱなしのパソコンの画面には、コマチの店舗内の見取り図。そして私が昼間に出した新しく配置するディスプレイ案を、事細かに打ち込んだあとが見てとれた。
しゃがんでその図面を見てから、眠りこける亘理さんの顔をのぞき込む。
……この人は、どうしてこんなに頑張るのだろう。
正社員だから?転職したてだから?昇進したいから?
前の職場でもこんな感じで仕事をしていたのだろうか。
最初の印象は、やる気も覇気もない、微妙な店長が来てしまったなあと思っていたけれど、今はそんなことはない。
とても真面目で、やる気が表に出ないだけの仕事熱心な人だ。
そのおかげで恋人には浮気されて、住む家までなくなって。
可哀想─────