朝はココアを、夜にはミルクティーを
「昨日も言った通り、今日はちょっと途中で抜けてスーツを買ってきます」
「分かりました。あ、亘理さん」
「はい、なんでしょう」
トーストを焼いてマーガリンとジャムを塗っただけの簡素な朝食を済ませた亘理さんは、早番の私よりも先に家を出ようとしている。
さっきまであちこちにはねていた寝癖は、どうやったのかちゃんと落ち着いている。
ちょっと急いでいる様子の彼に、いつもより手を抜いた中身が入っているお弁当を渡した。
「買ってくるの、スーツだけじゃダメですよ。ワイシャツとネクタイと、あと靴下も忘れずに」
「………………たしかにそうですね」
やっぱりというかなんというか、見事に忘れていた様子だ。
お弁当を受け取ると「本当にありがとうございます」と微笑んで、足早に玄関から外へ出て行った。
恋人じゃないから別に見送りなんはしない。どうせ見送ったところで三十分後にはまた顔を合わせるのだから。
私も食器などをさっさと片付けて、仕事へ行く準備を始めなくては。
自分の食器をシンクに持っていくと、亘理さんが使った食器は綺麗に洗われていて、さらにはしっかり水気も拭いていってくれたらしい。
コップと重ねて置いてあった。
こういうところは、とても律儀だ。
その意外性に感心しながら、私も自分の食器を洗い出した。