朝はココアを、夜にはミルクティーを
ショッピングカートに次々にめぼしい商品を入れていく。
予算は聞いていたので、きちんと計算しながらリーズナブルなものを選んでいった。
「ツリーの飾りってこれくらいで足りますかね?」
だいぶカゴが満杯になった頃に亘理さんに聞いてみるが、彼は分かりませんと一点張りだ。頼りにならない。
本当にただの荷物持ちのような形になってしまっていて、私としてはもう少し相談しながら決めていきたかったのだが残念だ。
「亘理さんって、彼女の買い物にもこんな感じでお付き合いしてましたか?」
「え?なんでですか?」
突然、思いもよらない質問をされたからなのか、一瞬彼の目に動揺が走った。
その反応だけで、私には彼の答えがなんとなく理解できてしまった。
「あーやっぱり。分かんないとか、任せるよーとか、そんな感じですよね?」
「見破られたみたいで悔しいです」
「そういうのって流されてるみたいでこっちとしては悲しいんですよ」
「俺は別に白石さんの意見は流してませんよ?」
「そうですか?」
流してたくせに、分かってるぞ私は。
ちょっと不満げに彼を見ると、恐縮したような顔をしている。
「白石さんの最初の印象と今の印象がまったく違うので、面白いなあと思って見ていたんです」
まったく関係の無いカトラリーのコーナーを眺めていたら亘理さんがそんなことを言い出してきたので、え?と首をかしげた。
「最初、全部諦めてますって感じでしたから。お客様が来ないことも受け入れて、このままでいいやって思ってませんでしたか?」
「だって契約社員の私に出来ることなんて……」
「そうなんですよね、白石さんはそれが常套句。でも今は、なんだかんだでちゃんとお店を変えようって考えてくれて、いつも俺に何をしたらいいかって聞きに来てくれるじゃないですか」
にこにこと笑う彼を見ていたら、チクッと良心がいたむ。
頑張っているのは、契約を切られたくないからだ。大前提にそれがある。
そりゃあ、亘理さんが頑張っているのも分かっているから、手助けしたいとは思うけれど、その前にこちらには生活があるわけで、いま契約を切られたらさすがに実家に帰るしかない。
「生活のためですよ、頑張ってる理由」
本当のことだから誤解されたくなくてそう言ったけど、亘理さんはやっぱり笑っていた。
「なんのためでもいいんです、前向きに仕事をすることは大切ですから」
……亘理さんも、生活のために頑張っているのだろうか。