朝はココアを、夜にはミルクティーを
6 きっとこれは違うはず


「亘理さんって、彼女いるのかしらね?」

亘理さんがうちのお店に来てから初めて不在の日がやってきた。
休みという扱いながらも、本社へ行っている頃だろう。

徐々に店内に冬の装飾を施し、やっと念願だったクリスマスツリーの飾りつけを大熊さんとやっていたら、彼女がそんなことを言い出したのでほんの少し戸惑った。

「彼女ですか?いないんじゃないですか?」


……実際、いないから私の家に居候しているわけだし。
とは言えないので曖昧に答えてみるが、大熊さんは脚立にどっこらしょと腰かけて大きな身体を屈めてきた。
一応、コソコソ話ということなのだろうか、私も彼女に耳を傾ける仕草をした。

「昨日見たのよ、可愛らしい水筒を持って出勤してきたのを!」

「…………あぁ……」

「それに毎日お弁当持参よ!?この間なんかお花の形にくり抜いたハムが入っててね!もう確信したのよ!どんな人と付き合ってるのかしら!?」

「大熊さん、それは……」

言いかけて、言葉を飲み込む。

彼女が言っている水筒は、朝のココアを飲む時間がなかなかとれない亘理さんがどうしても飲みたいと言うから、やむを得ず家にあった水筒に入れて渡したもの。
お弁当のハムに関しては、少し余っていたから散らしただけのつもりだったのだ。

そんなところまでしっかり見ているあたり、大熊さんの目ざとさに舌を巻きそうになる。

まさか私の口から同居していることは言えないし、お弁当の件も水筒の件も言えない。

「……どうなんでしょうね、あはは」


苦笑いを返して、その場はごまかしておいた。

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