朝はココアを、夜にはミルクティーを


その後、お店に出て商品を並べたり、細かいディスプレイを変えたりして午前中を過ごしたのだが、フラッと来店した親子連れが早速クリスマスツリーに反応して喜んでくれていて、たったそれだけのことなのに心がほっこりした。
そういう笑顔を見れただけでも、ツリーを飾ってよかったなあと。

さらには、その親子連れにはクリスマスケーキの予約はやってないのかとも聞かれた。
準備中だけども、必ず用意はするという話をしたら、「また来ますね」と言っていた。

この地道な努力が身を結ぶ日が来ればいいと思う。
きっと、いつか。





少し遅いお昼休憩に入ろうと店内にいるスタッフに声をかけ、休憩室に立ち寄った。
探していた大熊さんの姿はどこにもない。
もう彼女はとっくに戻ってきて休憩していてもいいはずなのに、まだ休憩をとっていないらしい。

もしかしたら、花を植える作業が思っていたよりも手間取っているのかもしれない。
ロッカーからボアジャケットを取り出して羽織り、急いで通用口から外に出た。

冬本番とまではいかないが、けっこう寒い風が緩く吹いている。
大熊さんはちゃんと上になにか着てやっているだろうか?

従業員用の駐車場を抜けて、表の入口の方へ回り込む。
途中、看板の塗り直しをすると言っていた社員さんとすれ違ったので大熊さんの居場所を聞くと、「まだやってたよ」と話していたので足を速める。

やはり最初から手伝えばよかったかな、と思いながらお客様駐車場をウロウロしていたら、見覚えのある丸い後ろ姿を見つけた。

大熊さんがしゃがみこんで、せっせとお花を植えているのが見える。

しかし、その隣には見知らぬ若い男性の後ろ姿。大熊さんと並んで作業をしている。手伝っているような感じがした。
スーツ姿の彼は大きなショベルで土を掘り起こしていて、そこに大熊さんがお花を植え込んでいくという連携作業をしていた。

< 57 / 162 >

この作品をシェア

pagetop