朝はココアを、夜にはミルクティーを
ひと口ミルクティーを飲んだ亘理さんは、ふと思い出したようにこちらを振り返った。
「そういえば、料理教室の予約はどうなってますか?広告や宣伝の効果は出てます?」
「あっ、はい。なかなかいい感じですよ」
今度は私がパソコンを操作し、さっきまでの画面を最小化して違うページを映した。
料理教室の全日程を数えるとそこそこの日数になる。
本当に人が集まるのか不安だったけれど、それは取り越し苦労だったようで、どの日もほとんど埋まっていた。
土日に開催されるものに関しては、すべて満員だ。
おそらく、ありとあらゆる宣伝力を発揮してくれた亘理さんのおかげである。
「目標は全日程満員ですね。もしも顔見知りのお客様がいらっしゃったら、こちらからお声がけしてもいいかもしれませんね」
「そうですね!ではそれも明日朝礼で皆さんに伝えます」
「お願いします」
私と亘理さんのミルクティータイムは、ほとんどこのように仕事の話になる。
でも、仕事中はお互いに忙しくて話せないし、顔を合わせてちゃんと伝えたいことを伝えられるから、意思疎通という点では他の従業員に比べて抜群にできている。
……一緒に住んでいるのだから当たり前か。
ググッと亘理さんは背伸びをしたのを合図にしたように、ダラっと後ろのソファーにもたれた。
私はパソコンを消して、閉じる。
そのままミルクティーを飲んでいると、ポツリと彼がつぶやいた。
「今度の休み、初めて白石さんとかぶります」
一瞬、どう反応しようか迷った。
二択の答えを思い浮かべ、間を置くことなく片方を選択する。
「……そうでしたっけ」
「はい、冷蔵庫に貼ってあるシフト見てみて下さい」
本当は、ちゃんと分かっていた。
働きっぱなしでお店に出ない日はない亘理さんと、私の休みがかぶったことは一度もなかった。
しかし、今月は一度だけ休みが同じ日があったのだ。
それが、次の休み。
気づかなかった体にしてしまったのは、自分でも理由がいまいち不明である。