朝はココアを、夜にはミルクティーを
数日後、私は五日ぶりの休日、亘理さんにとってはおそらく数週間ぶりの休日がやってきた。
いつも休みの日でもなにかしらの理由でお店へ行っていた彼が、今日はどうやら行く気はないらしく私服でリビングのソファーに座ってココアを飲んでいる。
「色々調べていたんですが、コメディ映画をご所望ということでよろしいですか?」
「まあ、楽しそうなやつならなんでも」
携帯で検索しているらしい亘理さんは、何度も画面に指を滑らせている。
曖昧に「とびきりくだらない」「笑えるやつ」「楽しそうなやつ」なんて言ってしまったからか、彼を困らせているらしい。
「これはどうです?邦画で、強面の中年のおじさんが美味しいお店を巡って旅をする話」
「笑える話ですかね?」
「……じゃあ、もうひとつ。洋画ですね、これは。ぽっちゃり体型の女性がイケメンの同期と冴えない後輩の二人に同時にモテる話」
「切なさとか入ってきませんか?」
「これが最後です。女子高生が生死をさまよって、透明人間になって会いたい人に会いに行く話。邦画です」
「……それきっと泣ける話ですよね?」
じゃあどうするんです、と不満げにじっと私を見ているので、慌てて肩をすくめた。
「す、すみません。じゃあそのぽっちゃり体型の女性のお話にしようかな」
「分かりました。映画時間はお昼すぎですから、お昼ご飯を食べたあとに行けばちょうどよさそうです」
とりあえず観る映画が決まったところで携帯をポケットにしまい、亘理さんはのんびりとココアを堪能している。
いつもはなかなかゆっくりココアを飲めない彼が、今日みたいに寛いでいるのを朝に見るのは稀なことだ。
連日の残業でさすがになかなか朝は起きられないようだ。
すでにココアを飲み終わった私は、せっかくの晴れの休みなので洗濯に勤しむ。
私のぶんの洗濯を回したあと、亘理さんも自分の洗濯をして、最後に私と彼のシーツも洗って、計三回洗濯機が活躍してくれた。
ハタハタとベランダにシーツが揺れる。