朝はココアを、夜にはミルクティーを
「恋をすると、きっとその人が一番になるんですよ。容姿とか関係なく、かっこよく見えちゃうんだと思うんです。だから、イケメンだろうがなかろうが、自分にとってはその人が一番素敵なんです」
「……そういうものなんですね」
「たぶん。少なくとも、私は」
これからする恋愛は、そうでありたい。
そういう想いを込めて、小さくうなずいた。
映画館を出ると、目の前にたくさんのお店が見える。
服や靴を売るお店、アクセサリーショップ、雑貨屋さん、子ども向けのお菓子屋さんなんかもあった。
ここに来たらなんでも揃いそうな、そんな大きな商業施設。
「亘理さん」
「はい?」
「…………ここに来たら、知ってる人に会ったりしませんか?」
少しだけ声をひそめて聞いてみた。
─────ここは、コマチにとっては憎き相手でもあり、亘理さんが以前働いていたブラマなのだ。
近所で映画を観られるところといえばブラマに入っている映画館くらいなので、おのずとここに来てしまうことになるのだが。
何も考えずに映画を観たいなんて言ってしまった、空気を読めない自分の性格を呪いたくなった。
彼はちっとも気にする様子もなく、軽く笑い飛ばしてくれた。
「会わないと思いますよ。俺がいたのはこの店舗じゃないですし。なんとなく顔は知ってる程度の人はいるかもしれないですけど、よっぽどじゃない限り声はかけてこないと思います」
「それならいいんですけど……」