朝はココアを、夜にはミルクティーを
「あぁ〜、洗濯物!畳んでくれたんですね、ありがとうございます」
リビングに入るなり、亘理さんは畳まれた洗濯物を抱えてお礼を述べる。ついでですからと返すと、それでもありがたいですと笑った。
洗濯物を衣装ケースにしまう姿を見ていたら、彼が何気なくこちらを向いた。
「今日は、突然こんなことになってしまってすみませんでした。部屋探しもできなくて……」
「それは全然!気にしてません」
「引き続きまたここにいても大丈夫ですか?」
「…………はい」
うなずいて、どこかでホッとしている自分がいるのを感じていた。
郁さんの話は、よりを戻したいとかそういう類の話ではなかったみたいだ。
またここにいてもいいか聞いてくるということはそういうことだ。
「お気づきだとは思いますが、郁は俺の元カノです」
淡々とネタばらしをする亘理さんの表情はいつもの彼と変わらなくて、危惧していた未練みたいなものは感じ取れない。
「……なんとなく、察してました」
「ですよね。白石さんなら、きっと分かっているだろうなと思ってました」
「あの空気感、それしかないなって」
「前に住んでいた部屋の名義変更とか、家賃の引き落とし口座とか、変更するのを忘れていたんですよ」
ソファーに腰かけて、亘理さんはポツポツと話し出した。
「俺も出ていくことだけ考えていて、そのへんのことは考えてませんでした。後日、諸々の書類を持って郁がお店に来てくれることになったので、その時はちょっと仕事を抜けるかもしれません」
「そうですか……」
また、郁さんと会うのか。
仕方ないとはいえ、モヤっとした感情が生まれて慌ててかき消す。