朝はココアを、夜にはミルクティーを
さっきから気持ちの移り変わりが激しくて、自分のことなのについていけない。
「郁さんは……、一緒に住んでる彼とはうまくいってるんですか?」
思わずそんなことを口にしてしまったのは、亘理さんは郁さんに対してどのくらい興味を持っているのかを知りたかったからなのかもしれない。
未練とは違う、興味。
好きの反対は嫌いではなく、興味がなくなると何かで聞いたことがある。
頭でたくさん考えていたのに、陳腐な質問しか出てこなかった。
うぅーんと眉を寄せて、彼はどうでしょうねと曖昧に答えた。
「そのへんの話はしませんでした。体調は崩してないかとか、食事はどうしてるんだとか、そんなことばかり聞かれました」
「…………あはは、今もあのままコマチの店舗に寝泊まりしてたら、どうなってたんでしょうね」
堪えきれずに笑うと、亘理さんも苦笑して頭をかいていた。
「まあ、今みたいにクリアに仕事はできなかったと思います。白石さんのおかげです」
「寝床提供しかしてませんよ」
「何言ってるんですか。良くしてもらえて、俺はものすごく感謝してます。こんなに安らげる空間を作っていただいてるんですから」
「え〜、お世辞っぽい……」
「俺はお世辞は嫌いです」
たしかに、亘理さんがお世辞とか建前を言ってるイメージはないが。
彼がどんな意識を持ってそう言ったのかは謎だけど、「安らげる空間」っていうのは、私の中でけっこう大きな意味を見いだせた。
いつも職場にいるみたいに堅苦しい口調で私と接して、家にいても仕事をして、休めていないんじゃないかって心配だったから。
開けっぱなしにしていたカーテンをしめた亘理さんが、お腹をさすりながら外を指さした。
「仕切り直しで、またちょっと出かけませんか?夜ご飯でも食べに」
「……ちょうどお腹が空いてきたところでした!」
「何か食べたいものあります?」
「急に言われると……。移動しながら考えます」
ここに帰ってきた時の私と、いま彼と出かけようとしている私とでは気持ちの変化があった。
じんわりと自分の中に芽生えた確かな想いを認める。
そしてそれを、そっと見えないように隠した。