朝はココアを、夜にはミルクティーを


─────実は、数日前に大熊さんに色々なことがバレてしまったのだ。

いつものように朝、ココアを水筒に入れて亘理さんに渡したはいいものの、おそらく私がフタをきちんとしめていなかったんだと思う。
そのせいで、彼が職場に着いた時には水筒とお弁当が入った袋がココアまみれになってしまって、大熊さんが床を掃除してくれた。

そこに居合わせた私が、思わず亘理さんに

「すみません!フタ緩んでましたか!?」

と聞いてしまったのが運の尽きだった。


あそこであんなことを口走ってしまったために、大熊さんには同居していることは知られていないものの、お弁当と水筒を準備しているのは私なのだと知られたのだ。

隠し通すつもりだったのになあ、と自分のミスを嘆く。


「お姉ちゃん!ウィンナーちょうだい!」

「……あ!はーい、ちょっと待っててね〜」

料理教室に戻ってもいまいち気分が乗らなかったものの、男の子のひと声でスイッチが入る。
今はひたすら仕事仕事、と。


今月に入って二週目には、カツヒコヤスダのクリスマスケーキは四種類すべて予約で完売した。
その後、予定通りにコマチオリジナルのクリスマスケーキを打ち出したけれど、どういうわけかそちらも予約が好調。
クリスマスまでまだ日数があるのに、こんなに盛り上がったことなんて私が勤めて三年は経験がない。

そして、少しずつ、本当に少しずつだけどお店の売上も上昇しており、亘理さんの目論見通りお惣菜の種類を増やしたことで若い主婦の客層が増えた。

ここ数ヶ月、姿を見ていなかった年配の常連さんたちもまた来てくれるようになったりして、なんだか嬉しいことの連続で、従業員みんな喜んでいた。

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