朝はココアを、夜にはミルクティーを
チキンとピザが焼き上がるのを待つ間、私と和田先生は分かれて参加者の皆さんにお茶やジュースを配る。
亘理さんの指示で、話しやすそうな雰囲気のグループのテーブルにさりげなく座り、話に混ざるよう言われていた。
そこから何か集客につながる情報を掴めればということらしいが、今のところただただママトークに圧倒されているだけ。
「うちの旦那の私服なんてさ、二パターンしかないのよ!ダサくて隣歩けないの」
「分かる分かる!最近買ったものって、そういえばお正月の初売りくらいよ」
「やだぁ、まもなく一年経つわよ?」
あはは、と明るいママさんたち三人の会話を聞きながら、私は苦笑いを浮かべる。
この人たちは元々知り合いみたいで、仲がいいようだ。
子どもたちもお行儀よく三人固まって座り、色鉛筆をみんなで交換しながらお絵描きしている。
きっとみんなしょっちゅう集まっていて、子どもたちも遊び方をちゃんと分かっているんだろう。
チキンのいい匂いがしてきたなぁとオーブンに目を向けていると、一人の茶髪のママさんが私に話しかけてきた。
「あのー、すみません。お姉さんっておいくつなんですか?」
「私ですか?二十七歳です」
「もうご結婚されてます?」
ぶしつけだったけど、女の人ってこんなものだよねと考えて、首を横に振る。
「独り身です。なかなか出会いがなくて……」
出会いはあったと言えばあったけど。
ここでは言えないので、とりあえずの答えを口にする。
「ここってあまり若い人働いてないし、お客さんも年齢層高そうだもんねぇ」
「でもなんかお店の雰囲気が良くなった気がして、最近けっこう利用しちゃう」
という二人のママさんに同調するように、もう一人が「そうなんだよね!」とうなずいていた。
雰囲気が良くなったというのは、こちらとしては褒め言葉だ。