朝はココアを、夜にはミルクティーを
十二月ももう終わりに近づいてきた。
いよいよクリスマス商戦はどのお店でも激しく、終わってみなければ良かったか悪かったかの結果は出ない。
これまでの二ヶ月で料理教室を何度も開催したり、駅前までクリスマスケーキのチラシを配りにいったり、SNSで宣伝したりと趣向を凝らしたPRをしてきた。
従業員の意識も変わり、亘理さんに言われるがまま働いていたみんなも、自分なりに考えて売り場を見やすくしたりポップを作ってみたり、持ち前の仲の良さを生かして全員で頑張ってきたのだ。
売上も先月から伸び続けていて、誰もが仕事にやりがいを感じ始めている。
亘理さんが来てから、約三ヶ月。
コマチは、確実に変わった。
「今日はいつもよりお客様の来店が多いから、休憩は三十分切り上げましょうか」
「そうね、急いで食べなくちゃ」
レジ担当の私と大熊さんは、休憩室でお弁当を早めのペースで口に運んでいく。
それぞれの部門で休憩時間がまったく異なるので、たまたま今の時間は私たちだけ二人の利用だった。
二人きりなのをいいことに、大熊さんが「ねぇねぇ」と楽しそうにこちらへ身を寄せてきた。
「瑠璃ちゃん。あれから亘理さんとはどう?」
「どうって、……何もないですよ」
彼女の前では隠し通せなくなったので、数週間前から素直に彼への気持ちを認め、こうして二人の時に色々と話をするようになっていた。
「まあ!なんてことかしら。亘理さんったら男らしくないわねぇ。告白は男からしてほしいわよね。昨今の男性は押しが弱いんだから……」
「そういうことじゃないんです。私も、まだ好きって伝える気にはなれなくて」
「どうして?脈ならあるわよ確実に」
彼は私のことは嫌いではないと思う。好きか嫌いかなら、好きだと言ってくれるとも思う。
でも、あくまでそれは仕事面でそう思ってくれているんじゃないかと最近感じるのだ。
多くの仕事を任されるようになって、私自身も責任感も出てきた。
前みたいに「私は契約社員だから」という言葉は口にしなくなり、何をすべきか自分で考えるようにもなった。
いつも思うのだ。
職場で話す亘理さんと、家で話す亘理さんは、いつも同じ。
何も変わらない。
家に一緒にいても、距離感はつねに同じ。
手が触れることすらない。