この夢がさめても、君のことが好きで、好きで。
「ねぇ、七海?」
「……っ」
ズキズキと、針で刺されたように痛む胸。
遠くで聞こえる電車の音と、なつかしい……数年前に置き去りにしたはずの、私の音が耳の奥でこだまする。
けれど私は、その音と痛みにそっと蓋をして、数回まばたきを繰り返すと静かに首を左右に振った。
サキを前に笑顔を浮かべ、去年も口にした言葉を一言一句変えることなく彼女へと渡すんだ。
「無理だよ。だって私、もう何年もピアノ弾いてないもん」
言葉にした瞬間、罪悪感と情けなさで私の心が悲鳴をあげた。
苦しい、嘘つき……ごめんなさい。