嘘の朝
もし今死んだらどうする?
誰が悲しむのだろうか
お母さんと弟と
えっと後は誰なんだろう
父は元々いないし
母側の祖父母とは随分会ってない
こんなんもスッと答えられないもんか
虚しいな。私も空っぽなんだな
辺りが夕焼け色に染まった頃
部活終わりの学生達の声と
散歩中の犬の鳴き声
点々と街灯が着き始めて
どこからかカレーの匂いがする
「姉貴?」
「…よ」
弟の拓海は1つ下で高校2年生
私とは違う、全く違う、
存在が。
スポーツ推薦で名門校へ進んだ彼は
姉の私から見てもキラキラしていた
そうコイツは良い奴
憎めないほどに良い奴でムカつく
「こんな早く帰るなんて珍しい」
「うん、いまテスト期間」
あーテスト期間か
高校の勉強はそれほど難しくもなく
だからと言って良い点を取る訳でもなく
ざ、平凡その言葉が相応しい。