いじめ ―きっかけは―
翼は何か決意したように頷くと、
私を持ち上げた。



「…ありがと。」



反抗しても、血が出てて
靴下に付いちゃいそうであまり暴れないようにした。




でも、これを誰かに見られていたら…。
愛美…。



そんな事を難しい顔して考えていたら
いつの間にか保健の先生が
目の前にいた。



「こんにちは。
 美海ちゃんよね?
 これ、間違えなく誰かの
 仕業よ…。
 心当たりある?」



「ないない!
 ありません。」



私は音が出るほど
首を横に振った。
だって心当たりなんて全然ないもん。



「そう…じゃ手当するわ。」



先生は軽く手当てを
してくれて、
行ってらっしゃいと
元気よく手を振ってくれた。



一言も会話を交わさず
全力で階段を駆け上り、
教室のドアをガラっと開けた。

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