いじめ ―きっかけは―
その時扉の開く音がして
教室内は一気に騒がしくなった。


「え、美海。」


田邨が目を見開いて驚きの表情。


愛美たちが、
池先に目をやった。


「すみません♪」


「トイレ行ってました♪」


案の定池先は席につけ、と
命令せずに目に困惑の色を浮かべていた。


「…田邨さん、有馬さんがどうしましたか?」


切り出し方が上手い。


「え?…あ、いえいえ!
 何にも♪」


愛美が田邨の足を蹴るのを俺は見た。


「いっ…」


「どうかしましたか?」


田邨が顔を歪めているのを不審に
思ったか、池先が問う。


「いえ…!」


聞かれていない田邨が元気よく
そう言って席に着こうとした瞬間、


「ちょっと待って下さい!」


池先の声が教室内に響いた。


「有馬さん…有馬 美海さんがさっき…」
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