梟に捧げる愛
3
騎士団に戻ったアイザックは、自分に向けられる視線が妙なので、不思議に思った。見られている。
もしかして、団服が濡れているからだろうか?
それなら仕方ない。
アイザックは納得して、着替えるために更衣室へ向かった。
「アイザック! アイザック・ヴェンデル!」
更衣室へ向かうアイザックを呼び止めたのは、自分の上司だった。
ジェラルド・ユルゲンス──王国騎士団第五師団師団長である。金色の髪と、緑色の瞳を持つ、精悍な男性だ。
「お前宛の差し入れが、また来てるぞ」
「また、ですか」
「人気者は辛いなぁ」
ジェラルドは慰めているのだろうか?
なんだかとても、楽しそうだ。
「以前、断ったのですが……」
「断ったって無駄だ。彼女達にとって、お前は憧れの騎士様なんだからな」
「憧れの騎士様、ですか……」
アイザックには、よくわからない。騎士というのは、どちらかと言うと敬遠されてもおかしくないのでは、と思うのだ。剣を持ち、魔物を討伐し、時には人を傷つけたりもする。憧れるような職種だろうか?
まぁ、出世する機会があるという意味では、確かに憧れるのかもしれない。男性は。
「それにしても、なんで団服が濡れて──あぁ、あれか」
濡れたアイザックの団服を見て、ジェラルドはひとりで勝手に納得した。
「すみません。すぐに着替えて来ますので」
「気にするな。チヴェッタ嬢を送り届けてきたんだろう?」
「見てたんですか?」
「いや。小隊の奴らが目撃したらしくてな、もう団の中に知れ渡ってる」
アイザックはやれやれと肩を落とす。女性ならばわかるが、男性で、しかも騎士が噂話を好むとは。
あまり褒められたものじゃないな。
「お前、いい加減にしないとチヴェッタ嬢がそのうち、大怪我をすることになるぞ」
「どういう意味ですか?」