茜色の記憶
昼ごはんの後、収穫した野菜を選別するおじいちゃんを手伝ったりしていたら、あっという間に夕方になった。

おじいちゃんに別れを告げ、家をでたところで猫が現れた。

野良だったのだけれど、凪が餌をあげているうちにすっかり懐いてしまった猫だ。

「お、ぶっちー」

見た目のぶち柄そのままに、凪はいつからかぶっちーと呼んでいる。
凪の呼ぶ声に、ぶっちーは甘えたように鳴き声をあげて、凪の足首に身体を擦り寄せて来た。

凪は黙ってぶっちーの体を撫でてやる。
最初はワシャワシャと雑に撫でていたのを、手を裏返して指の関節を当ててこするようにしてやると、途端にぶっちーはゴロゴロと喉を鳴らし始めた。
完全に凪に心を許しているのがわかる。

「ぶっちー、ちょっとごめんな。帰って来たら、ご飯にしような」

そういうと凪が歩き出した。名残惜しそうにぶっちーが凪を見送り、凪の家の縁の下に潜って言った。

「なんか、ぶっちーに悪いね」

「大丈夫、帰ったらめいっぱい相手するから」

そっか、ならいっか。凪にめいっぱい相手してもらえるなんて、ぶっちー、いいなあ。

凪のこととなると、わたしはつい猫にまでやきもちをやいてしまう。
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