茜色の記憶
翌日は朝八時から、凪の家に行った。

わたしがデニムにノースリーブのカットソーという格好で現れると、凪は呆れた顔をした。

「そんな格好でできるわけないだろう。いい加減、学習してください」

そう言いながら、凪のダンガリーシャツを渡してくれる。
夏の畑には日差しとか、虫とか敵がたくさんいるのだ。
長袖長ズボンが基本なのを忘れていた。

でも、凪のシャツを着るのはいい気分だった。
うちの洗濯物は柔軟剤の香りがするけど、凪のシャツからはお日様の匂いがする。
それが凪らしくて、ほのぼのとした気持ちになる。

おじいちゃんの畑では今の時期、キュウリやトマト、オクラやズッキーニが収穫期を迎えていた。
今日はキュウリをメインに収穫する。

町の中心地にある「山と海のマルシェ」という大きなマーケットに出すための収穫だ。

小学校高学年くらいから、夏休みの度に凪と作業しているから、作業についてはよくわかっている。
頭で考えるより先に体が動く感じが、気持ちいい。

凪も黙々と作業に徹している。力作業って、働いているって実感がわくから好き。

作業しながら、ふと昨夜の夕飯の時のことを思い出していた。
お母さんの言ったことは正しい。
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