茜色の記憶
第二章 特別な力
ある日の午後、おじいちゃんに頼まれた振り込みをするために、わたしと凪は郵便局に出かけた。
わたしのお父さんはこの郵便局の局長をしている。
子供の頃は学校の帰りなんかにふらりと立ち寄って、お父さんや局員の人たちとおしゃべりしたりおやつをもらって帰ることがしょっちゅうだった。
でも、中学生になった頃から、逆に近寄らなくなっていたから、久しぶりに顔を出すのはなんだか緊張した。
わたしと凪が郵便局に入って行ったとき、お客さんは誰もいなかった。だいたいここが混み合うのは、年末年始くらいのものなんだよな……
と思いながらカウンターの奥を覗き込むと、お父さんと数人の職員の人たちが真剣な顔でなにかを話しあっていた。
「お父さん」
わたしが呼びかけると、話しあっていた全員がこちらを見た。
「あら、くるみちゃん! 大きくなっちゃって!」
「後ろにいるの、凪くん? あらー、イケメン!」
途端に賑やかになって、みんながこちらにやってきた。
凪がおじいちゃんにたのまれた支払いの手続きをしている間、わたしは久しぶりに会った職員の人たちに囲まれてしまう。
「しばらく見ないうちに、きれいになったなあ」
「いくつになった? いやーわたしも年をとるはずだわね」
顔見知りの職員さんたちが、口々に声をかけてくる。
「いや、中身は子供のまんまだよ。家の手伝いもしないで、好き勝手なことしてる」
お父さんがそんなことを言いながら、会話の中に入ってきた。
「何かトラブルだったの?」
さっきまで真剣に話し込んでいたのが見えたから、そうたずねると、お父さんは苦笑いで言った。
わたしのお父さんはこの郵便局の局長をしている。
子供の頃は学校の帰りなんかにふらりと立ち寄って、お父さんや局員の人たちとおしゃべりしたりおやつをもらって帰ることがしょっちゅうだった。
でも、中学生になった頃から、逆に近寄らなくなっていたから、久しぶりに顔を出すのはなんだか緊張した。
わたしと凪が郵便局に入って行ったとき、お客さんは誰もいなかった。だいたいここが混み合うのは、年末年始くらいのものなんだよな……
と思いながらカウンターの奥を覗き込むと、お父さんと数人の職員の人たちが真剣な顔でなにかを話しあっていた。
「お父さん」
わたしが呼びかけると、話しあっていた全員がこちらを見た。
「あら、くるみちゃん! 大きくなっちゃって!」
「後ろにいるの、凪くん? あらー、イケメン!」
途端に賑やかになって、みんながこちらにやってきた。
凪がおじいちゃんにたのまれた支払いの手続きをしている間、わたしは久しぶりに会った職員の人たちに囲まれてしまう。
「しばらく見ないうちに、きれいになったなあ」
「いくつになった? いやーわたしも年をとるはずだわね」
顔見知りの職員さんたちが、口々に声をかけてくる。
「いや、中身は子供のまんまだよ。家の手伝いもしないで、好き勝手なことしてる」
お父さんがそんなことを言いながら、会話の中に入ってきた。
「何かトラブルだったの?」
さっきまで真剣に話し込んでいたのが見えたから、そうたずねると、お父さんは苦笑いで言った。