茜色の記憶
「いや、宛先人不明の手紙があってね。ここら辺の人たちのことはよく知ってるつもりだから、おかしいねって話してたんだ」
「宛先人不明?」
お父さんの言う通り、わたしですらここらへんに住んでいる人たちのことはみんなよく知ってる。
小学校も中学校もひとつずつしかないから、子供たちどうしはほぼほぼみんな顔見知りみたいなものだし、地域の結びつきが強いから、それぞれの家のトラブルなんかも筒抜けだったりする。
その近さを親密さだと思えれば居心地はいいけれど、それを煩わしく思う人も多い。
お兄ちゃんもその親密さを「うざい」とひと言で片付けて、出て行ったのだった。
「局長、そしたらこれ戻す手続きしますね」
そう言って、局員の人が一通の手紙を持ってきた。
「この手紙?」
「ああ、宛先人不明なんて滅多にないことだから、なんか悔しいんだが」
その手紙は普通の封書だったけれど、でも分厚くて、想いがぎゅっと込められているもののように見えた。
「宛先の名前なんていうの?」
「宛先人不明?」
お父さんの言う通り、わたしですらここらへんに住んでいる人たちのことはみんなよく知ってる。
小学校も中学校もひとつずつしかないから、子供たちどうしはほぼほぼみんな顔見知りみたいなものだし、地域の結びつきが強いから、それぞれの家のトラブルなんかも筒抜けだったりする。
その近さを親密さだと思えれば居心地はいいけれど、それを煩わしく思う人も多い。
お兄ちゃんもその親密さを「うざい」とひと言で片付けて、出て行ったのだった。
「局長、そしたらこれ戻す手続きしますね」
そう言って、局員の人が一通の手紙を持ってきた。
「この手紙?」
「ああ、宛先人不明なんて滅多にないことだから、なんか悔しいんだが」
その手紙は普通の封書だったけれど、でも分厚くて、想いがぎゅっと込められているもののように見えた。
「宛先の名前なんていうの?」