茜色の記憶
凪は追いかけてくるわたしのことなど気にもとめずに、自転車にまたがると、こぎ出した。

わたしも追いかける。

凪が向かっているのは『山と海のマルシェ』だろう。
凪はきっとゆきさんに手紙のことを話すつもりなんだ。


いつもとは逆のポジションで自転車をこぎながら、わたしは驚いていた。

穏やかでマイペースな凪が、こんなに必死になるなんて。

こんなに夢中でペダルを踏む凪の後ろ姿を見るのは、初めてのことだった。
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