茜色の記憶
いつも一緒にいるから、勉強時間は変わらないはず。
っていうか、お母さんと離れておじいちゃんと暮らしている凪は家のことを手伝っている時間が長いから、わたしより時間がないはず。それなのにいい成績をキープできるって、なんでだろ。

凪のおじいちゃんは学校の成績のことをうるさく言わない。

うちのお母さんは成績が悪いと、大げさにため息をつく。

「どうしてこんな成績しかとれないの?」

「どうしてちゃんと勉強しないの?」

って、どうして攻撃が延々と続く。

うるさく言われるわたしの成績はイマイチで、なにも言われない凪の成績がいいって、なんだか不条理……、そんなことを考えながら走っていたら、後ろから声が聞こえた。

「くるみ、そこ飛び出すなよー」

学校からの一本道を車の量がふえる国道に出る角のところで、凪はいつもそう声をかけてくれる。

「わかってる!」

そう言い返すけど、凪がいない時飛び出しそうになって車が目の前をかすめていったことが、何度かある。全然学習しないわたしをよく知っている凪の忠告は正しい。

わたしが止まると、後ろからきた凪が隣に止まって、左右を確認する。

「いいよ」

そう言われて、再びわたしはペダルを踏みこむ。

いつも後ろから凪が見ていてくれる。
その安心感に包み込まれて、わたしの毎日は穏やかに平和に過ぎていた。
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